top of page
dvas9900

Cronusのクロック換装




以前、タイムロードから超高級オーディオマスタークロックジェネレータであるCronusが発売されました。ルビジウム発振器を使った高精度なクロック生成はもちろん、何より驚いたのはその筐体設計です。まるで金庫のような分厚い金属の塊でした。なんでクロックでこんな筐体が必要なのか?全く理解できませんでしたが、音を聴いてしまうと納得するしかないような、そんな製品でした。


発売からだいぶ長い時間がたちましたが、内蔵しているルビジウム発振器が経年劣化でドリフトが大きくなり、動作しなくなってしまう症状が発生するようです。もちろん、モジュールを交換すればすぐに直る話なのですが、私が調べた限り、Cronusに使われているルビジウムモジュールはすでに新品での入手ができないようです。


クロックの使い方に関してはメーカーにより見解の違いがあり、いかにもオーディオらしいのですが、私は本質的には低位相ノイズのクロックをDA変換(製品ではなくLSIとか回路の意味)の直近に配置し、動作させるのが最適と思っています。


とはいえ、実際には愛用しているエソテリックのP05X+D05Xから少しでも良い音を引き出すため、ルビジウム発振器を搭載した自作マスタ―クロックジェネレータを組み合わせて同期運転しています。P05X+D05X単独とマスタークロック(10MHz)を組み合わせた状態では、あきらかにマスタークロックを外部から供給したほうが拙宅の環境では良い音でした。


クロック入力端子を装備しているDACとかトランスポートであれば、外部からマスタークロックを供給する意義は、やはりありそうです。実際、私のオーディオ仲間でもCronusの愛用者は多く、彼らにとってはCronusは掛け替えのない相棒のようです。


長年Cronusを愛用してきた仲間から、最近、Cronusが動作しなくなってしまい、なんとかならなか?と相談をいただきました。モジュールが手に入ればもちろんすぐに交換できますが、先に書いた通り新品のモジュールを入手することはできません。


そもそもルビジウムモジュールはルビジウムの原発信が10MHzなのではなく、固有周波数を分周回路で演算し内蔵のVCOで10MHzを生成しています。なぜルビジウムが使われているかといえば、絶対的な発振の安定度です。長期にわたり固定周波数で発振させるためにルビジウム使っているわけで、それがたまたま位相ノイズに関しても優れていたということになります。クロックの発振がどうあるべきか?に関してはいろいろな文献なり資料で報告されているとおり、オーディオ用途に関しては長期安定性よりも短期安定性を重視した設計が好ましいということが定説になったようです。

その視点で考えると現在ではルビジウムモジュールの位相ノイズよりも、さらに優れた低位相ノイズ性能を有するOCXOの方が音質は優れているという声が大きく、ゆえに、OCXOを使った製品が多くリリースされるようになりました。

ルビジウムと違ってOCXOは原発振=製品出力となり、純粋な発振回路以外に回路は不要です。まあ、OCXOなのでヒーターは必要になりますが、本来ヒーターは長期安定性を維持するためのもので、純粋なオーディオ用であれば不要なものともいえます。


手に入らないルビジウムに未練を募らせても物事は前に進みませんので、Cronusを何とかしたいという相談に対してOCXOへの換装を提案しました。


OCXOもピンからキリまでありますが、Cronusのルビジウムモジュールよりも高性能であることを基準に選定すると、そうは多くないことがわかります。いろいろと調査した結果、これならCronusに換装してもオリジナル以上の性能になりそうなOCXOを発見。

モジュールの出力は正弦波でしたが、矩形波にしてほしいという要望もあり、超高速コンパレータと超高速OPアンプを使った正弦波→矩形波変換回路を新規設計し、これらを新規設計のリニアレギュレターで駆動する回路を一枚基板に搭載したOCXOモジュールを作りました。


簡単に換装、というわけにはいきませんでしたが、おかげでCronusのこともだいぶ理解できました。


最初にオーダーいただいたお客様には「オリジナルよりも良くなった!」との感想をいただきほっとしました。


現在、二台目の換装オーダーをいただいており、完成後のヒートランを実施しています。


納品後、「良くなった!」という感想がいただけると良いのですが。。。



閲覧数:133回

最新記事

すべて表示

Kommentare


bottom of page